交通事故の過失割合は決まっている? 判例タイムズとは

お客様との話の中で、

「交通事故の過失割合はどうせ決まっているんでしょう」

と言われることが割とあります。

 

「決まっている」というのは少し誤解があります。

しかし一般的にそうした理解が定着しているのにはワケがあります。

それは、いわゆる「判例タイムズ」という本の存在です。

この本により具体的な基準が示されているため、保険会社による示談ではこの基準に従った解決になることが多く、そうしたイメージが定着しているのでしょう。

 

「判例タイムズ」とは

いわゆる「判例タイムズ」とは、判例タイムズ社が発行している別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」のことです。

昭和50年に第1号が公表され、2017年8月時点での最新版は全訂5版(平成26年7月発行)となっています。

↓こんな本です

別冊判例タイムズNo.38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」全訂5版

交通事故の状況は千差万別ですから、過失割合の決定は本来ひとつひとつの事故について個別に判断すべき問題です。

しかし膨大な数の交通事故の賠償問題について公平・迅速な解決をはかるためには、一定の基準がなくてはなりません。

交通事故を状況ごとに類型化し、それぞれの場合に適用すべき過失相殺率の認定・判断基準を示したものが、判例タイムズです。

(なお「判例タイムズ」というと正式には月1回発行されている雑誌の方を指します(→Wikipedia)が、損害保険業界で「判例タイムズ」 といった場合は通常「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」をさします)

 

判例タイムズの構成

適用図の分類

判例タイムズは多数の「適用図」からなり、全訂5版においては全部で338の適用図が用意されています。

これらの適用図はまず次の7つの類型により大きく分類されています(以下すべて全訂5版によります)。

①歩行者と四輪車・単車との事故(全50図)
②歩行者と自転車との事故(全47図)
③四輪車同士の事故(全62図)
④単車と四輪車との事故(全75図)
⑤自転車と四輪車・単車との事故(全76図)
⑥高速道路上の事故(全23図)
⑦駐車場内の事故(全5図)

(このうち「②歩行者と自転車との事故」および「⑦駐車場内の事故」については全訂5版ではじめて示されました)

そしてこの大分類の中で、事故状況をさらに細かく分類しています。

たとえば「③四輪車同士の事故」は次のとおり分類されています。

・交差点における直進車同士の出会い頭事故(全9図)
・交差点における右折車と直進車との事故(全19図)
・交差点におけるその他の態様の事故(全21図)
・道路外出入車と直進車との事故(全3図)
・対向車同士の事故(センターオーバー)(全1図)
・同一方向に進行する車両同士の事故(全4図)
・転回車と直進車との事故(全2図)
・駐停車車両に対する追突事故(全1図)
・緊急自動車と四輪車との事故(全2図)

 

適用図の構成

それぞれの適用図には「基本の過失相殺率」を設定しています。

(「20:80」「40:60」など)

それとあわせて、適用図ごとに具体的な「修正要素」が数値とともに示されています。

(「+10」「+20」「-5」など)

 

「修正要素」の代表例は速度違反です。

各適用図は基本的に制限速度を遵守していることを前提として基本の過失相殺率を設定しています。

そのため多くの適用図において速度違反を修正要素として示しています。

 

判例タイムズはあくまで「基準」

このように、判例タイムズはとても詳細にそして具体的に作られています。

ただしすべての事故状況を網羅しているわけではありません。

また、あくまで基準を示したものであり、ひとつの目安にすぎません。

このことは判例タイムズの中でも注意喚起されています。

もっとも、本書記載の基本の過失相殺率は、各規準表に記載した典型的な事案を前提としたものにすぎず、実際の事件においては、個々の事故態様に応じた柔軟な解決が望まれる。
本書を利用する際には、各事故態様の個別性を踏まえ、基準化された基本の過失相殺率とその修正要素の背景にある考え方を適切に応用していくことが、民事交通事件の適切な解決に不可欠なものであり、過失相殺率の認定基準の画一的な運用は避けるべきである。
(別冊判例タイムズNo.38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」全訂5版、「はしがき」より引用)

 

まとめ

判例タイムズは絶対的なものではありません。それは時代の流れにあわせて改訂してきたことからも伺えます。

ですから「交通事故の過失割合は決まっている」は誤解であるといえます。

ただ、訴訟の場を含め現実の交通事故賠償においてこの判例タイムズの認定基準が広く活用されていることは事実です。

このため判例タイムズを無視することは現実的ではありません。話し合いが平行線に終わることはほぼ間違いないでしょう。

判例タイムズの定める基準の背後にある考え方を理解することが、交通事故における賠償問題の解決には欠かせないのです。

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2017年8月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : hayami