示談交渉の場において、保険会社が過失割合を決めてしまうことはありません。
(過失割合を断定できるのは裁判所のみであり、しかも訴訟の結果として判決が出された場合に限られます。)
ではどうしてこんな誤解が起きてしまうのか。
それは、示談交渉サービスに対する期待と現実のギャップが原因なんです。
お客様の期待と保険会社の現実を並べると次の通りです。
お客様の期待 : 「保険会社が自分のためにとことん闘ってくれるに違いない」
保険会社の現実 : 相手方と折り合いがつかない場合、割合早い段階で再考を促す
ここでは示談交渉サービスの中身についてご説明し、まずは保険会社の現実について知っていただきます。
そのうえで、どのようにして誤解が起こってしまうのかを改めて解説いたします。
どうぞお付き合いください。
示談交渉の中身は大きく分けて2つ
示談交渉サービスは、次の2つの作業に分けることができます。
①相手方の損害額の確定
②過失割合の交渉
①相手方の損害額の確定
交通事故の示談交渉というと「②過失割合の交渉」のイメージが強いかもしれませんが、実のところ保険会社の専門性が発揮されるのはこちらの方です。
物損事故においてはアジャスターや鑑定人と呼ばれる専門家を手配して、損害額の妥当性を確認しています。
被害物が自動車である場合はアジャスターの出番です。
事故とは無関係な範囲まで請求していないか、また修理費が相場より不当に高い金額ではないか、という点についてチェックを行います。
なおチェックの性格上、この作業は加害者側が行うこととなっています。
たとえば自動車同士の事故であれば、こちらの自動車は相手が調査し、相手の自動車についてはこちらの保険会社が調査するということになります。
(相手の自動車を相手の手配したアジャスターが調査したのではチェックが甘くなっている可能性がありますので)
②過失割合の交渉
保険会社による過失割合の交渉は、基本的には「伝言ゲーム」だと思ってください。
意外に思われるかもしれませんが、実は事故現場を見に行くことはほとんどありません。
事故状況に関するお互いの認識が全く食い違っているケースであれば、リサーチ会社に依頼して確認を行いますが、状況の認識が概ね一致していればお客様の話のみをもとに交渉を進めます。
そのため、お客様の考える過失割合を確認し、それを相手方に伝えることが基本となります。
これは相手方の保険会社も同じです。
そうするとどうなるか。
第1回の過失割合の交渉では、折り合いがつかないことがほとんどです。
なぜなら、自分の責任は小さく、相手の責任は大きく感じるのが人間の常だからです。
まして不慣れな交通事故のことともなれば、なおさらです。
では過失割合の折り合いがつかなかったらどうするか。
ここで判例タイムズの出番となります。(参考記事:交通事故の過失割合は決まっている? 判例タイムズとは)
保険会社の担当者は判例タイムズを参照し、当該事故状況における一般的な過失割合を確認します。
そしてお客様に次のようにお伝えし、再考を促していくことになります。
「相手はこれくらいの過失割合を主張しており、折り合いがつきませんでした。」
「ところで、今回の事故における一般的な過失割合はこのくらいのようです」
「そのことを踏まえてお気持ちはいかがでしょうか?」
通常このやり取りは双方の保険会社にて行われます。
そして再考を促された結果、当事者のいずれか、もしくは両方が過失割合について妥協して折り合いがつけば晴れて示談成立となります。
逆に言うと、歩み寄りがなければいつまで経っても示談は成立しません。
どのようにして誤解が起こってしまうのか
「保険会社に過失割合を決められた!」という誤解は、上記のうち「お客様に再考を促す」というプロセスで起こります。
第1回の過失割合の交渉結果を聞くまで、たいていのお客様は「過失割合に関する自分の意向を踏まえ、保険会社が事故状況をいろいろと調査して証拠を集めとことん闘ってくれているに違いない」と期待しているのではないかと思います。(何を隠そう、私もその1人でした)
そのように期待していたのに、保険会社から再考を促されたのでは少なからずショックを受けるのではないでしょうか。
もちろん、納得できず従来通りの主張を続けても問題ありません。
ただその場合高い確率で交渉が平行線になることが予想されます。
そうすると保険会社から何度も再考を促される羽目になり、妥協することになります。
結果として、「保険会社に過失割合を決められた!」という印象が残ってしまうのです。
本当に納得のいく解決は、他人任せでは得られない
当店は保険会社の代理店ですので、示談交渉の権限を持っていません。
そのため当店のお客様が事故に遭われた際には保険会社へ示談交渉を任せておりますが、お客様の窓口となり、お客様と保険会社との橋渡し役となるよう努めております。(ご参考:アフターサービス)
お客様とお会いして事故状況を詳しくお聞きしたり、必要に応じて事故現場へ赴いたりして、お客様に有利になる情報をできる限り保険会社へお伝えできるよう取り組んでいます。
しかしながら、本当に納得のいく解決を得るためには、お客様自身に本気で闘っていただかなければ難しいと考えています。
具体的には、ドライブレコーダーの装着などの事前の対策と、弁護士といっしょになって本格的に闘っていく姿勢が欠かせません。他人任せではなかなかうまくいかないのです。
そのあたりのお話についても別記事にてご紹介していきますので、どうぞよろしくお願い致します。