過失相殺の根底にある考え方とは 〜「原因を作ったのは誰か」ではない

実際に交通事故に遭われた方の多くは、判例タイムズに基づく一般的な過失割合を説明された時、「自分の過失はもっと小さいはずだ」と感じるようです。

運転イメージ

私が経験した交通事故

何を隠そう、この私自身がそうでした。

事故処理に携わる前のことです。

信号機のない交差点で、出合い頭事故に遭いました。

相手側に一時停止がある、見通しの悪い交差点でした。

突然飛び出してきた相手に気付いて急ブレーキをかけましたが、止まり切れず衝突したのです。

相手のスピードが早く、一時停止していなかったに違いないと強く感じたため「自分は悪くない。過失ゼロもあり得るんじゃないか」くらいに考えていました。

そこへ保険会社から「一般的な過失割合は20:80です」と聞かされ、大きなショックを受けたことを覚えています。

(なお、相手の一時停止義務違反を前提としたうえでの20:80という評価になっています。)

 

なぜ自分の過失は小さいと考えたか

どうしてそう考えてしまったのか。

そこには2つの要素が絡み合っていたような気がします。

 

1つは「相手がきちんと一時停止していればぶつからなかったはずだ」という思い。

「この事故の原因を作ったのは、一時停止しなかった相手の方だ」と考えていました。

 

そしてもう1つが「気が付いてからすぐに急ブレーキをかけた。あれ以上どうしようもなかった」という思いです。

「避けようがなかった。だから自分は悪くない」と考えていました。

つまり自分の落ち度について、衝突のせいぜい数秒前までしか振り返っていなかったのです。

 

実際の判断は

しかし過失割合の検討にあたっては、「原因を作ったのは誰か」と総合的に考えるようなことはしません。

当事者のそれぞれについて、「過失がなかったかどうか」を個別に判断していくのです。

そしてその判断は、衝突の危険が具体的になった時点以降のことよりも、もっと手前の段階において「こんな事故が起こるかもしれない」と予見して注意を払っていたかどうかという点に重点を置いています。

自動車教習所で教わる「かもしれない運転」をしていたかを見られる、ということですね。

 

私自身の事故の話に照らせば、

①交差点の手前で「脇道から自動車が来るかもしれない」と予想すべきだった。

②そしてその予想に基づき、交差点手前で減速すべきだった。

ということになります。

しかし私は相手車が来ることを予想せず、減速もしていませんでした。

その結果として事故が起こったわけで、減速していれば事故は防げたに違いありません。

その点について過失相殺率20パーセントと評価されたということです。

 

なお、判例タイムズにおいては減速を次のように定義しています。

法定の徐行(道路交通法2条1項20号)の程度に達している必要はないが、当該道路を通行する車両の通常の速度(制限速度規制が参考となろう。)より明らかに減速していることをいう。一般に、時速40km制限の場所では、おおむね時速20km前後まで減速した場合を想定しており、このような場所で時速60kmを時速30kmに減速しただけでは足りない。また、当該事故態様において衝突の危険が具体的となった時点での速度を基準に考えるべきであり、衝突直前の急ブレーキによる減速は論外である。
減速していることを想定して基本の過失相殺率を定めた事故態様では、減速していないことを不利な修正要素としている。

かみ砕いて言えば、

①「ぶつかる!」と思った時点において、

②すでに制限速度の約半分ていどまで減速していた

ことをもってようやく減速として認めるということです。

 

…そりゃここまでしてたらまず事故は起こりませんよね。

 

まとめ

交通事故に遭った場合、どうしても「相手がどれだけ悪かったか」という具合に、相手に対して意識を向けてしまいがちです。

しかし、自分に意識を向け「事故を前もって予測できなかっただろうか。予測できたとしたら、事故を防ぐためにできることはなかっただろうか」と考えてみてください。

とてもつらい作業ではありますが、そうして自分の過失を受け入れないと、交渉の結果にいつまでも納得できず、心にしこりを残すことになってしまいます。

ただ、賠償問題における過失割合というのは、あくまでご自身と相手との個人的な問題でしかないこと、社会としてあなたの運転を非難するものではないことについてはぜひ理解しておいてください。

過失割合は金銭問題を解決するために決める便宜的なものに過ぎないのであり、多くの場合において大した問題ではないのです。

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2017年8月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : hayami